地熱井の掘削時に、オンタイムで地下の温度を把握することは効率的な掘削をするうえで、また事業の経済性の上でも非常に重要な課題である。坑井掘削中の温度は直接把握することは不可能なため、一般には循環泥水の温度の変化や入口温度と出口温度の温度差で判断している。しかし、直接に温度を把握することは不可能である。現在、我々は、流体包有物の均質化温度の最低値から温度を推定しているが、地下温度に良く合うことがほぼ実証されている。数多くの深度でも均質化温度が得られれば、掘削中の坑井の温度プロファイルを知ることができる。坑井が掘削によって冷却している場合、坑内実測温度では地下温度を知ることはできないし、数回の温度測定結果からの平衡温度もそれ程正確ではない。特に、貯留層周辺フラクチャーは逸泥によって、貯留層が冷却されることから、猶更温度を知ることは難しい。こういうときにも貯留層周辺の二次熱水脈鉱物(主に石英)中の流体包有物の均質化温度は貯留層の温度を良く反映している。偏在の貯留層温度が分かれば、氷融点温度から得られる包有物中の液体のCl濃度を知ることができるために、掘削しながら、Clーエンタルピーによる混合モデルの検討ができると思っている。
このように、掘削中あるいは掘削直後に、如何に早く地下の地熱構造を把握するかが効率的な開発のカギを握ると思われる。さらに、一つの深度でも包有物の均質化温度の頻度分布をみると、分布の特性に特徴が見られ、周辺の地熱活動史を考えるうえで重要な情報となる。
