地熱開発の難しさは前にも述べたとおり資源開発の難しさ、温泉事業との競合、国立公園などの規制などと言われている。しかし、これらの問題が強調されるたびに思うのは、この他に見逃されていることがあるということだ。そもそも、開発可能で有望な地熱地域が本当に抽出されているのだろうか。多くの開発事業者が地熱開発促進調査の報告書や坑井データを見て有望地域を選んでいると思うが、本当に適切に有望地域が選ばれているのだろうか。地熱開発促進調査は1980年に開始されたが、その頃の調査の手法や結果の解釈は地熱構造モデルの実態が分かっていなかったため、正しく解析・評価されたとは思わない。それに加えて、開発目標発電規模は50MWであった。例えば10MW作るならば、有望な地点でも50MW規模を対象とすれば、それ程有望でないと判断されていたのである。
現在のように、100kW以下の規模であっても事業化しようとするならば、まだまだ有望なところは全国各地に存在するに違いない。このような視点から、地熱開発有望地点の再抽出が必要ではないかと思っている。促進調査のデータあるいは新たな手法に基づく調査結果を基に精度の高い地熱構造モデルを構築し、有望地域の抽出方法を真剣に考えて、開発地域を特定し、開発につなげた方が成功への近道である。