地熱水の流動や貯留構造を知ることは、地熱開発を行う上で非常に重要である。そのことは、昔から言われてきたことだけれども、纏まったテキストは少ない。地熱資源を評価するために地熱構造モデルや流体流動モデルの構築は必要不可欠で、これらのモデルの出来不出来が地熱開発の成功不成功につながると言って良い。我々は、地下3,000mまでの流体の化学特性や流れの様子についての多くの情報を地熱開発に伴う坑井データから得てきた。この経験から得られた知識やノウハウは浅部の地下水の貯留や流動形態の解明に役立つのではないかと考えている。折しも、日本経済新聞9月29日の夕刊の「明日への話題」に地下水のゆくえという記事が住友林業の市川晃氏によって投稿されていた。この中で、扱われた熊本の水資源と流動については、地熱開発に手を染めた頃、もう50年ほど前になるが、阿蘇山からの地下水の流れと菊水からの地下水の流れの2つがあることを示したことを思い出した。
地熱資源の開発利用も重要だが、それ以上に地下水資源も重要で、地下水の流れや貯留形態を理解し保全することがこれからますます重要になっていくに違いない。そのために、地熱開発で得た技術が使えないかと模索中である。