地熱構造モデルの構築は、掘削位置の決定から可採資源量の評価、発電規模の決定までの事業化にとって非常に重要である。特に、掘削地点、ターゲットとなる貯留層の選定にとっては成否を分けるほどである。しかしながら、意外と見落とされていることがある。それは、地表調査結果の総合解析を行う上で、断層の抽出と性状の把握が不十分ということである。調査結果から抽出された重力不連続が比抵抗不連続などがしばしばそのまま断層として扱われ、掘削ターゲットになったりしていることである。これらの不連続は、断層の可能性はあっても断層ではない。これらの不連続についての地質的な緻密な解釈が必要である。断層以外にも岩体の物性の違いや地質構造特性などを反映しているかもしれない。もちろん、断層だけをとっても、正断層と逆断層の違いで、貯留層の発達状況は大きく異なってくる。こういったことを詳細に検討したうえで、断層を推定、開発の対象とするという工夫が必要である。このような傾向は、地熱専門の調査会社のレポートでも散見され、調査時には十分な注意が必要である。